数学独習法 冨島佑充著 講談社現代新書
文系人間の私にとって、大部分の中学高校で習った知識は人生において直接役に立っている実感はないが、数学にある程度習熟している人の話は考え方のレバートリーが豊富で知性を感じられ、コンプレックスを感じてしまうのだ。なんとなく、とりとめもなくものを考えることが多い私にとって、数学的な思考は思考の幅を広げるのに必須条件のような気がする。数学の公式を覚えるというよりは、数学的思考を身につけたいのだ。そんな願望を持っている私に近い人にはにぴったりの本がこの数学独習法だ。
この本の構成は
第1章 これからの時代に必要な数学四天王
第2章 代数学 仮説を立てて謎を解くための数学
第3章 幾何学 ビジュアル化系数学の豊かすぎる使い道
第4章 微積分学 動きや変化を単純化してとらえる数学
第5章 統計学 ビッグデータ時代を生きるために
この章ごとの見出しだけでもなるほどと思わせる。
第一章だけでも数学苦手な人は公式はおいといて、第一章だけでも読みたい。数学を使ってどういった思考を表現したいのかという観点から書かれている。
第2章と第3章では代数学と幾何学は表裏一体であること。特に三角関数についてその観点から理解が深まった。また名前だけしか知らなかった結構身近に活用されているフーリエ変換についてもイメージをつかめたような気がしたのは収穫だった。また第5章では標準偏差の解説が今まで読んだ数学本のなかで一番わかりやすかった。
この本は試験対策や本格的に数学を取得したい人には少々物足りないかもしれないが、全体を通してそれぞれの章がなにをいわんとしているかざっとつかめるだけでも、数学に普段なじみない人には思考の幅を広げるのにとても有益になる本ではないでしょうか。おすすめだ。